12/21/2014

私的2014年音楽作品番付 <洋楽・邦楽>

淡々と書いていきます。

<洋楽>

1. Real Estate / Atlas


前作「Days」は夕暮れ時には欠かせないBGMだった。今回先行して発表された「Talking Backwards」は午前の太陽が放つ眩しい光線のような美しい楽曲で、これまでになかった胸キュン要素を補完。ここまでギターの音を綺麗に重ねられるバンドは他に知らない。Weezerに関するエピソード等、同世代ならではの愛着も個人的には強い。後は、作品のポップさと裏腹にセールス的にあまり成功していない様子が頂けない&勿体ない。ほら、今度のHostess Club Weekenderも前座みたいなポジションだし...。




2. The War on Drugs / Lost In The Dream


前作である種の高みを見せ、かなり期待の高かった今回のリリースだったが、メロディーがかなりポップになって、持ち味であるタイトなドラムと緩やかなギターの相性が最大限活かされた傑作だ。もはやカート・ヴァイルがどうとか、そういう冠はまったく不要だ。
なぜか今作は中期頃のU2感があるというか…一曲目の「Under The Pressure」のせいか? いつかスタジアム級のバンドになる予感のする作品でした。端的に言うと、めちゃくちゃエモい。歌詞は私には意味がよく分からない。小難しいことは、どうでもいいのかもしれない。




3. Grouper / Ruins


一時期寝るときはずっとGrouperの「A I A」を掛けっぱなしにしてた頃があった。その他How To Dress WellやTwin Shadow等、色々掛けて楽しんでいたが、夜中にふと目覚めたとき、Grouperの奏でる音を聞くと格別に何とも言えない多幸感に包まれたものだ。
今作はまた一層コンセプチュアルな作品となっており、イントロ・アウトロでそれぞれドローントラックが添えられ、環境音のようなノイズも入っている。輪郭のないような、得体の知れない印象のGrouperであるが、この「Ruins」では少しリズの核心に迫る聞き所が多い。それにしても静岡の福嚴寺フェスに来てたなんて、大物になった今では信じられない。



4. Fennesz / Bécs


記念碑的作品「Endless Summer」から13年、その間に出された作品には少しも心を揺さぶられることはなかったのに、「Bécs」を聞いたら涙がこぼれそうになる。今作が巷の音楽好きの中で好評なのは、本質的なサウンドの魅力もさることながら、多くの人が「Endless Summer」を連想し、思い出補正を行ったことも大きいと思う。まだあの夏に終わりがないことを信じる大人たちに贈られた名作。




5. How To Dress Well / "What Is This Heart?"


よく知らなかったがインディR&Bというのが流れとしてあるらしく、気づいたらHow To Dress Wellもその位置付けになっていたが、もともとはNeon IndianやActive Childなんかと同じチルウェーヴ(死語?)一派として聞いていたので違和感がある。まあそれはそれとして、一気に突き抜けた、というか化けた。確かにR&Bとして括られるのも分かる。いや、これはR&Bですね。チルウェーヴなんかじゃない!
サウンドに傾注した印象から、一気に歌とメロディーで魅せるミュージシャンになった。もちろん「What You Wanted」等、ニクい音使いは健在。




6. Pains of Being Pure At Heart / Days of Abandon


上半期のベストを書いた際にはベタ誉めしたが、今作はアルバム内の楽曲に非常にムラがありちょい下げ。このバンドに関してはなぜだか少々贔屓してしまう…。




7. Goat / Commune


正直色物系の一発屋バンドだと認識していてあまり期待していなかったが、またしても見事なエセ・トライバル・ミュージックだ (勝手にそう呼んでる)。スウェーデンはメタルだったり、スウェディッシュ・ポップだったり、色々あって謎の国である。それでもいつか住んでみたい。サブ・ポップの今を物語る象徴的な作品。




8. Sharon Van Etten / Are We There


ビジュアルもアートワークも歌詞もタイトルもメロディーも、すべてが美しいアルバム。そもそも美人が歌うというだけで名盤力は高まるってものです。抽象的な歌詞の中に、爽やかな狂気を感じられます。それもマゾヒスティックに…。




9. Spoon / They Want My Soul


Yahoo!モバイルのコマーシャルでまさかの日本のお茶の間進出を果たしたSpoon。5年前くらいまでまったく興味がなかったのに、このオジさんバンドに今は心を奪われている。唐突な挿し音や、ダミ声、真面目さ、ストレートな「ロック」サウンドに私はワビ・サビを感じる。



10. Angel Olsen / Burn Your Fire For No Witness


Grouper、Sharon Van Etten、Julianna Barwick等、静謐な雰囲気の女性のロックばかり聴いていたからか、Angel Olsenの歌声で妙な新鮮さを感じてしまった。ばりばりオルタナって音ですね。こういうむっちりしたアメリカの女の子大好きだ。




<邦楽>

1. V.A. / Light Wave ’14 (Vol.1)


Ano(t)raksからリリースのフリーコンピ盤。No New Yorkのように見事にバランスよく複数ミュージシャンの曲がコンパイルされている。フリーダウンロード作品でここまで聞きこんだものは嘗て無いな…。
中でもShin Rizumu氏、恐ろしい才能を感じる高校生。「嘘つきな女の子」で参加。Ano(t)raksからのDL作品やフィジカル盤を聞けばわかるが、キリンジやらフリッパーズやら様々な影響を感じさせるものの、まだまだ若さを感じさせるボーカルや歌詞は変に毒されてなくて良い。冨田恵一プロデュースだったらあっさりブレイクしてしまうこともあるだろう…なんて考えてしまうが、そうなると今度は今の氏の持つ良さは大いに損なわれるのだろう。
もう1曲、辻林美穂氏の「You Know...」、90年代後半だったらありふれてそうな音だが、何度聞いても近いものが浮かんで来なくて不思議。80〜00年代のJ-POPを総括するような美しいコード進行。なんにせよフリーなので一聴して損なし。



2. シャムキャッツ / After Hours




2014年リリースであることを忘れていた、それくらい聞きすぎたし、また昔から当たり前のようにそこにあるポップソングのような堂々とした安定感もある。もっと巷に流れていてもいいはずの音楽。ブリットポップ前夜のようなドリーミーでちょっと間抜けな世界が延々と続く幸せ。




3. くるり / THE PIER




ライブでアルバム発売に先行して披露された「Liberty&Gravity」を聞いただけで次作は確実に素晴らしいアルバムになるだろうと予感できた、それくらいくるりは今脂が乗っていると思います。前作も新メンバー体制で非常に勢いのあるアルバムだったが、今回も吉田省念が抜けて三人の新体制。くるりは常に変化している。過渡期という概念がない。いつかは落ち着くものなのかと思っていたがそんなこともない。常にマエストロ岸田氏の趣味や気分を音楽に変えていくのがくるり。再びあの名コピー「すごいぞ、くるり」が浮かんだ人も多いのでは。




4. Tours / Kittens e.p.


たまたま入ったJET SETに積まれていた新着作品の群れから、何の気なしに手に取った一枚。買ったときは誰がやってるバンドなのかも知らなかったが、元YOMOYAのボーカル山本氏のバンドであった。YOMOYA時代は特別好きでもなかったのに、Toursは手放せない。音源がこれだけしかないのが辛い。もっと聞きたい!
音は録音の質感故か、なんとなくギラギラ日差しが照りつける砂漠で聞こえてくるような印象。喉が乾く。メロディーの完成度が非常に高い。フルアルバムが非常に楽しみです。




5. ゆるめるモ!× 箱庭の室内楽 / 箱めるモ!


ジャーマン・ロックからの影響を、みたいな話をよく聞くが、あまり感じないけど…。ジャケもWeezerだし…。でも曲がいいです。



6. 渚にて / 遠泳


久方ぶりの新作。ふと聞きながら思ったのは、商業ベースで成功する森は生きているやcero、シャムキャッツは、渚にてのような所謂「うたもの」バンドが居たからこそ生まれてきたということは大きいだろう。頭士奈生樹参加によりこれまでにないアンサンブルの厚みと、ずっと変わらない柴山氏と武田氏の声が私の心を揺さぶり続ける。あと、竹田氏のドラムはなんかいつまでも不思議だ。


7. 山本精一 / Falsetto


すっかりおなじみのパートナーになった千住氏とのタッグでつくられた新作。「ラプソディア」、「LIGHTS」と多作な昨今であるが、サイケ色がより強めに出ている。


8. Lamp / ゆめ


気づけばLampもベテランの域に入ってきているのか。ライブもほとんどなく、スタジオで制作に勤しんでいるようで、ちょっと仙人掛かってきた部分もある。「メロウ」という言葉で括られるうちはどうもチープな印象になってしまうが、ここまで極めれば美しいとしか言いようがない。白眉「シンフォニー」のイントロだけで私は胸がいっぱいになる。




9. 銀杏BOYZ / 光の中に立っていてね




待ちに待った新作。私の高校卒業と同時にゴイステは解散、大学進学後少ししてからリリースされた銀杏BOYZの2作は衝撃的だったし愛聴したが、年齢のせいもあってかどハマりすることはなかった。それから暫く銀杏はシングルのリリースのみに活動を留め、別名義や外仕事も増えてしまい活動休止したものかと思っていた矢先、今度は柄にもなく就職というステージに登り疲れ果ててしまった私は「17才」という南沙織の銀杏BOYZによるカバーを聞いて涙する。ほぼアカペラとノイズと絶叫で構成されるこの清楚な曲はもともと知ってはいたが、グチャグチャに噛み壊され、バックでは地獄のようなコーラス(嗚咽?)が重ねられ、どう考えても汚いはずなのだが、不思議とキラキラと輝いている。この曲が収録されているだけでも十分に価値あるアルバム。




10. スカート / サイダーの庭




前作「ひみつ」はかなりの傑作であり期待高まる中でリリースされた新作。前作に比べ突き抜けのない落ち着いた、複雑で暗めのメロディーの楽曲が多い印象だが、やはり次世代のポップを牽引できる圧倒的なセンスの良さだ。




<番外編:国籍不明>

 Vaporwaveはやはり私には衝撃的な音楽であり、流行り始めから今もそれはずっと変わらない。無論内容は90年代ポップカルチャーが前提にあり、一定世代にしか受け入れられないものだとはわかっているがこれからも永遠に聞き続けるであろう。
さて、Vaporwaveは本当に国籍がわからない。モチーフ自体は日本のものが多いが…。そして、音がどこまでオリジナルなのか、どこまでサンプリングなのかもわからない。それでも以下2作は圧倒的な個性を持っており、Vaporwaveなどという狭い世界ではなく、SAINT PEPSIのようにワイドに羽ばたいていってほしい。特にECO VIRTUALの3作品は間違いなく今年のベストだ。

bluntside / 未来 THE FUTURE





ECO VIRTUAL / ATOMOSPHERES 第1/第2/第3






<おまけ・ベストトラック10選+1>

The Horrors / So Now You Know




The Vaselines / One Lost Year



ゆるめるモ! / さよならばかちゃん




tofubeats / ディスコの神様 feat.藤井隆





豊田道倫 & mtvBAND / オレンジ・ナイト




How To Dress Well / What You Wanted





Lamp / シンフォニー






Pixies / Greens And Blues






くるり / Liberty&Gravity





平賀さち枝とホームカミングス / 白い光の朝に



Shin Rizumu / 嘘つきな女の子






<おまけ・功労賞>

https://vaporwave.me

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