8/31/2013

話題の新興音楽にみる90年代 Seapunk篇

少し書くのが遅くなってしまったが、ポストSNS音楽として話題の"#Seapunk"、これにどっぷり浸かっています。
海のパンク…訳せば意味がまったく分かりません。海洋生物の鳴き声やら波音をサンプリングした、シーサイド感のあるAORか何かだと思ってたのですが、実は意外とゴリゴリした電子音楽でした。

八月には来日もしているUltrademonなるミュージシャンがその始祖であるようですが、これまた出で立ちが凄い。90年代の異物の権化。

PVを見れば一発ですが、ビジュアル面の要素が大きいジャンルですね。この90年代感溢れる、Windows95でやったことあるような安い3DCGゲームやスクリーンセーバーのような映像。セガのソニックはPVに出てきてますね(笑)。ひたすらサイケデリックです。そしてクリスチャン・ラッセンを彷彿させるイルカたち。懐かしいですね、ラッセン。子どもの頃、友達の家にジグソーパズルとかよく飾ってありました。無意識の内に幼少期の脳味噌の根幹に焼き付いたアートです。
ラッセンは近年来日や個展が増えたり、オマージュのアートが生まれたり、はたまた□□□の歌詞に出てきて世代感を醸す要素として引用されたりと、何かとブームは再燃しているように思います。
とにかくその辺りのネタを仕込みまくって、目で、耳で、全身で(海を?)味わう、これまでにはなかったまさにインターネット全盛時代の固有のジャンルなわけです。


ところで、Vaporwaveも然りですが、このジャンルは今だけのものだといってよいでしょう。90年代のダサさが程よい頃合いで円熟し、サイケデリックに、そしてかっこよく感じられるのは恐らくこの数年だけ。時代は繰り返すといいますが、またただのダサさに纏われ、最後はレトロになっていく。
そして恐らく青春時代を90年代に過ごしたであろうリスナー世代も懐かしさとトリップ感を覚えるのはほんの一時的な気がします。

話がどんどんそれますが、90年代ブームは、バブルに象徴される80年代と、個人主義が大成した00年代へのコンプレックスをエネルギーとして形成された感があります。サブカルチャーの開花は景気のよかった80年代で間違いないし、楽しみ方が増えたのは00年代で間違いない。では、90年代は?…
ただの過渡期ではなく、大量消費されたチープな文化を、(無断の)引用の大量消費を以って少しずつ意味付けし再理解していく、そのプロセスがSeapunkとVaporwaveに象徴されるネット世代の音楽・映像なのだろうと解釈しています。
海のように大きく広がる90年代の文化遺産たちが、新たな命を芽吹かせつつあります。