7/23/2014

一発屋を聞く【洋楽篇】Vol.1: Semisonic、The Montrose Avenue、New Radicals

ここでの一発屋というのは、決してそのアーティストを貶めるものではなく、寧ろ一発飛び出した事への敬意と、時代の徒花として散っていった事への同情を込めて、誠意を持って書きたいと思います。
今回は20世紀の最後に一花咲かせた美メロ系バンド3組を取り上げます。


Semisonic / Closing Time



この頃のゲフィンは、グランジの影響下にあるアメリカン・ロックを量産しており、そのどれもメロディーはなかなか秀逸である。なかでもSemisonicはずば抜けて泣きのメロディーにこだわっており、中学生の私のハートもガッツリ掴まれた。このしゃがれ声に弱いんだよなぁ。アルバム「Feeling Strangely Fine」もお小遣いで買いました。
今聞けば単純なメロディーで、深みもそんなにないが、これはこれで。「洋楽って、かっこいい!」って思わされたのをちゃんと覚えてます。この頃のアメリカン・ロックに影響を受けているミュージシャンも多いのではないかな、と思う(ダサいから公言はされないだろうけど。)てかそもそもアメリカンロックってなんなんだ。
一応彼らのことを調べると、多少遅咲きであり、嘗ては意外にもサイケロックバンドをやっていたそうな。「Closing Time」はグラミー賞を受賞しているが、サイケロックでは無理だったろうなぁ。


The Montrose Avenue / Where Do I Stand



このバンドは本当にもっと評価されてもいいと思う。今からでも遅くない。
そもそもビジュアル良し、歌良し、日本人好みの歌曲風の泣きメロ&ハーモニー、・・・売れ要素しかないのになんで消えてしまったのか。
ロンドン出身の5人組、The Montrose Avenueはデビューアルバム「Thirty Days Out」1枚と数枚のシングルのみを残して解散しているが、当時はフジロックに出演する等、日本でもかなり人気があり、シングルの日本盤なんてものも出ていたと記憶している。この時期のイギリスの音楽市場は、所謂ブリット・ポップが低迷し、なんだかよく分からない過渡期みたいな状態にあったようだ。素敵なバンドも多数いたと思うが(挙げたらキリがない)、この混沌の中で非情に淘汰されていったのだろう。そういう意味では「持っていない」バンドだったのだろう。


New Radicals / You Get What You Give



1997年頃であろうか。私がまだ音楽情報のソースをFMラジオに一存していた頃、名古屋のZIP-FMでよくかかっていたと思う。まさにザ・洋楽というイメージで、「洋楽」と言われればこの曲が浮かんでくるくらい。まだ英語もよく分からず、興味こそなかったが、メロディーの美しさにどこか惹かれていたのかもしれない。この数年後、サンタナとミシェル・ブランチによる名曲「Game of Love」がZIP-FMでもヘビロテ、私の中でも大ヒットするのであるが、この高揚感のある2曲の作曲者が同一人物だと知ったとき、恐ろしく合点が行ったものである。というか、「Game of Love」は本当にいいな、改めて聞くと。New Radicalsよりこっちの方が良かった。サンタナの夕焼けを描くようなギターも最高だ。このギターソロは心に残る。そして、ミシェル・ブランチ、どこへ行った。



7/17/2014

Tours / Kittens EP

TOURSを知ったのは下北沢のJET SETにスカートの新譜を買いにいったときだ。
スカート「サイダーの庭」は予想外に値段が安く、ワンコイン余ったのでもう1個なんか買っとくかと田舎者の私は考え、果てに目の前にあったこの感じのよいジャケットの作品を手に取った。そんな私はジャケ買い信者である。
試聴もしなかったのでまったく音の想像はつかないが、まあJET SETで売ってるなら間違いなかろうということで帰宅してプレイヤーにかけてみる。するとどうだ、下手したらスカートより素敵じゃないか、ってくらい良い音が流れてきた。

調べてみるとボーカルは2011年に解散したYOMOYAの山本氏、ドラムは話題のシャムキャッツの藤村さんということで、なんとまあ手に取るべくして手に取ったようなCD-Rであった。



音は非常にまろやかで、進行形のUSインディー系と共鳴するような音だと思う。
こういう音は流行だと思うが、どう表現したらいいのか分からない。紹介記事等を見ていると、フォーキー、オルタナティブ、シティー等のキーワードが頻出するが、そんな感じで間違いない。例えて言うなら、山本さんの、さらりとしつつもアクの強いボーカルと歌詞、分かりやすいメロディーの組み合わせはAlfred Beach Sandalなんぞを彷彿させたりする。はたまた、ちょっと不協和音的なコーラスや捻くれたギターリフなんかを聞くと、昔いたSoFkayなんてバンドを思い出したりも。まあそれは余談で。
巷に溢れるシティポップ系、オーガニック系のロックと同じ括りに入れられていても違和感は無いくらいにとても耳なじみが良いが、前述の通りのコーラスや、絶妙なブレイク、強靭なドラムソロ&ギターソロ等、サウンドは本当にクセがある。超絶にトガっている。聞いていて飽きない。それから、所々字余りになりそうな分量のリリックを綺麗に歌いこなすのが、とても面白い。

本作は4曲入りのEPであるが、どれも異なる志向でありながら、美しくまとまった鮮やかな作品である。

1. Kittens
タイトル曲。YOMOYA結成からカウントすればもう10年近い経歴になる山本氏のセンスが結集されている、と思う。



2. ドレスコード
一番好きな曲。「君とワルツを踊る格好になる」という詞のお洒落さったらない。アウトロの歪んだギターまでじっくり快感を味わえる。

3. 王の船
王舟?一番スローな曲。展開部の地味な盛り上がり方は、とても奥ゆかしく、ピアノ(?)系のノイズが重なるところは本当にグッとくる。



4.  赤い車
タイトルのせいじゃないが、スピッツが歌ってても違和感のないような元気な曲。
なんだからところどころナンバーガールの影を感じる。この曲に限らず。全然音の表面には出ていないけど。

と、ここまで書いて思ったのが、騒がしい白昼夢のようなアルバムと書くとしっくり来る。決して夜向けの音楽(ナイト・ミュージックとでもいうのか?)ではないし、シティ系でもアーバン系でもなく、真っ昼間から河原でドンチャンとBBQをするような、小洒落ないジャンキーさが魅力だ。そしてそれこそ、超究極のお洒落であり、美しい。

7/13/2014

NANO-MUGEN FES. 2014

・KANA-BOON
若手で一番勢いがある、というコピーもよく耳にするバンド。昨年度の「CDショップ大賞」に2作もエントリーしていて、プッシュされているのは間違いない。私も1stアルバムは借りました。TSUTAYAで。本公演のフロント・アクトではあるものの、会場の熱気はマックス、アリーナも満員で、とにかく勢いがあった。「僕らを見に来ているお客さんもたくさんいると思うけど、素敵なバンドがたくさん出るので最後まで楽しんでって下さい」という主催者的な発言に度肝を抜かれた。ボーカルのビジュアルも、MCも溌剌としていてブレイク必至でしょう。

・It's A Musical
いい!事前にネットで聞いて予習はしていたものの、結構インパクトあった。キーボード&ボーカルの女の子とドラムスの兄ちゃんの、欧州の2人組。トイ・ポップと言われそうなチープでシンプルな構成で可愛らしい音を鳴らす。片方がスウェーデン出身(どちらの人かは分からない)とのことで、スウェディッシュ・ポップ色を持ちながらも、不思議と由緒正しいフレンチ・ポップの匂いがする。そんな売れてるわけではないと思うんだけど、プロモーション次第では大化けする気がする。好き。


・Tegan And Sara
カナダの双子がギター、ダブルボーカルを努める2人組ユニット。カナダのFLIP-FLAP、てなところか? カナダ発で有名なミュージシャンって、Arcade Fireみたいなちょっとウィットのきいたロックか、あるいはとことん大衆的なポップスに大別される気がして面白い。こちらは後者で、ボスボス腹に突き刺さるシンプルなドラムが特徴的なシンセポップ。ボーカル抜きで(なんて言ったら失礼だが)も、充分に楽しめる演奏だった。

・グッドモーニングアメリカ
KANA-BOONと同時デビューと聞いていたから若手かと思っていたら、もう三十路越えしてて、下積み長いんだなーと思ってしみじみとした気持ちで見てしまった。NICO Touches the Wallsと同じようなメロディーが印象に残るポジティブなポップロック。2000年代前半はナンバーガールとスーパーカーの影響下にあるバンドが多かったが、いつからでありましょう—おそらくアジカン・ストレイテナー・ART-SCHOOLの御三家辺りからオルタナ色が消え、きれいで伝わりやすいメロディーの日本語のロックが、「売れる」ロックバンドの絶対条件となったのだろうな。となると、ここにこのバンドが招かれているのは必然か。ベーシスト「たなしん」さんの面白パフォーマンス、声の良いギタリスト、真摯なボーカル。バランス良い。

・Ropes
後にストレイテナーに移籍する日向氏、大山氏を嘗て擁していたART-SCHOOLの戸高氏と、on button down、KARENのアチコさんによるユニット。ギター1本とボーカルだけなのにこの重厚な感じは、流石アチコさん。生脚も美しかった。

・ストレイテナー
主催者アジカンの盟友、ストレイテナー。出演は毎年恒例らしい。ヒットナンバーを凝縮した素敵なセットリストの中で、デビュー曲「TRAVELING GARGOYLE」を初めてナマで聞けたのでもう大変満足。やはり演奏が巧い、特に日向氏。こうしてフェスで聞くと一層感じる。この切れ味は流石。後で知る事になるのだが、シークレットゲストでSOIL&"PIMP" SESSIONSが出るならば、「From Noon Till Dawn」はタブゾンビの飛び入り付きで見たかったな、と思った。あと、NANO-MUGENコンピ盤に入ってる「翌る日のピエロ」は演奏せず。聞きたかったのに…。

・Owl City

・Hi, how are you?
初見。odd eyesにも所属していた男の子と、素朴な女の子の2人組。ちょっと遅れて始まったのは、MCにあった「日産スタジアムと横浜アリーナを間違えた」からか? ギター&ボーカルの原田さん、巨漢だし、おれの昔の友達に似てるし、何だかただ者じゃない!のは間違いない。オザケンをちょっとマッチョにしたような歌い方が素敵。

・くるり
とにかく良かった。くるり最高。
くるりはバンドアンサンブルという点において、今絶頂期なのだろう。
くるりもフェス出演が多いので、最近は年に2、3回程見ているのだが、これまでと圧倒的に違う熱を感じた。
恒例の開演前リハでの「ワンダーフォーゲル」から始まり、一曲目「Morning Paper」の美しいアウトロ。この演奏を聞いて、「Philharmonic or die」というタイトルがふっと浮かんでくる。頻繁にライブを見てると、岸田さんの志向が常々変化しているのがよく分かるが、最近はまたこの手の爆音サイケがご流行の様子。
この美しい演奏を提供するのは、ファンファン含む基本メンバーに加え、Boon Boon Satellites等で活躍し、本公演でも硬派なドラミングを聞かせてくれた福田洋子さん、吉田省念さんの抜けた直後から完璧なサポートに入った山本幹宗さん(元The Cigavettes)。ドラムはあらきゆうこさんや元54-71のBOBOさんだったりする事も多く、メンバーはかなり流動的なバンドだが、岸田さんの圧倒的なイニシアチブで奇跡的にバンドの勢いは保たれている。特に「坩堝」まではなかったファンファンの大味なトランペットが、その勢いを下支えしているのは間違いない。最強の布陣だ。
岸田さんの眼鏡がずり落ちるほど白熱したプレーに次いで、「ワールズエンド・スーパーノヴァ」でちょっとさっぱりしたあと、新曲2曲をぶっ続けで披露。その場でタイトルはよく分からなかったが、ネットで調べると「loveless」と「Liberty & Gravity」。「loveless」、今のくるりにぴったりのタイトル。恒例のチオビタのCMソングだ。そしてMCで先に"なんか変な曲やります"と言い訳した「Liberty & Gravity」、これがとにかく素晴らしい。私の耳がよければもっと鮮明にストーリーが聞き取れたのだろうが、何やら博士が登場するような話が綴られた曲。東洋的な色を添えた轟音の真っ只中、LibertyとGravityという単語が登場するサビのようなところで感極まって思わず涙が出そうになってしまった。(その場では歌詞を覚えていたが、一日経ったら忘れてしまった。年ですね。)くるりも所謂"変な曲"は多いが、ここまで複雑な構成で、色々と曲調が変化するのはまだ聞いた事が無かった。シングルカットされるのかどうか分からないが、これが収録されるであろう新作アルバムが楽しみである。
この語、岸田さんの気遣いで著名なシングル曲「ばらの花」「虹」「東京」で結ばれる。アレンジはちょっとずつされているものの、最近のくるり曲と同じノリで聞けるのはちょっと不思議だ。これだけ多様な種類の曲を出しておきながら、やはり岸田さんには「さよならストレンジャー」から通じて何か一貫したものがある。
「虹」「東京」が最後というのは、別に意識はしてないかもしれないが、先日亡くなった佐久間正英さんとくるりのタッグで生まれた名曲だ。そんな事を考えながら、轟音に包まれて美しく楽しく聞き終えた。ぶっきらぼうなMC。颯爽と帰っていくメンバー。ロックバンドとして鮮やかだった。
「坩堝の電圧」は間違いなく完成度の高い名盤で、くるりの中でも大きなターニングポイントとなる作品であるが、リリース後しばらくしてからその作品からの楽曲は、知る限りライブでは演奏されていない(と思う)。これには岸田さんの色々な思いがあるのだろう。今回のライブを見て、今度のアルバムは「坩堝〜」すら過渡期的な作品だったと思わせてくれるくらいに、スゴイものになると期待している。
尚、今回珍しくアジカン、くるりの共演になったわけですが、私にもアジカンはくるりのパクリバンドだなんて思ってた時期がありました。この二者の関係ってこれまであまり取り沙汰されなかった気がするが、今回の共演そのものや、岸田さんの後藤さんのメガネに関するMCや、ゴッチブログに書かれたくるりへの思い等、興味深いところを知ることができて面白かった。

・The Young Punx
ジュリアナ東京みたいで面白かった。イギリスのm-floみたいな感じか?

・The Rentals
前半の音響が悪すぎて辛かった。ここまですごく音がよくて感動してたのに、勿体無い。後半は何とか持ち直し、1stからの名曲オンパレード。「Friends of P」に私の心が燃え上がる。実は先日のアジカンの周年ライブにもたまたま行っていた私、そこでもマット・シャープを見ている。一年に二回もマットのライブを見ることなど、アジカンファン以外にはできまい。
Ashのティム・ウィーラーがギターを担当していたのもビックリ。サプライズでAsh「Girl From Mars」も聞けた。世代的にはツボだが、20代前半の子はAshの栄光の時期を知らないかも。まったく名前を聞かなくなってしまったAshだが、カムバックを期待したい。てなわけで無駄に音が粗かったのが勿体無いが、いいものを聞けた。

・ASIAN KUNG-FU GENERATION
アジカン。通好みの曲を織り交ぜつつ、「リライト」「君という花」等の名曲もジャンジャンやる。アンコールではマット・シャープ、ティム・ウィーラーも登場しWeezerカバーも。
後藤さんのMCは癖あるし敵を作りやすいだろうけど、本当に純粋な人なんだろうなと思う。主張を通す為に敢えて嫌われ役を買って出てる、と評した記事を何かで見たが、Twitterでも噛み付きやすいところを見ると、そんな次元でもない気がする。


というわけで、初めて来たナノムゲンでしたが、涼しいし、混みすぎてないし、座席はしっかりあるし、駅近だし、メシはうまいし、非常に環境が整っていて素晴らしいフェスでした。

とにかく、くるりがよかった!
くるり!
くるりのリスナーとしてはTEAM ROCK〜アンテナの頃がピークで、最近あまり深く聞いてなかった。
しばらくくるりをもう一度デビュー時期から聞き直す生活になりそう。
すごいぞ、くるり。

7/06/2014

私的2014年上半期音楽作品番付 <洋楽・邦楽>

こんなの自己顕示以外の何モノでもないですが、よいものがたくさんありましたので。


<洋楽>

1. Pains of Being Pure at Heart / Days of Abandon




セカンドと比べて明るめの楽曲が多いものの、ジャケット画のようにどこか退廃的な印象を受ける。ボーナストラックが良いらしいが、私はアナログで買ったため未聴。しかし、アコギが美しい「Art Smock」でゆっくりと始まり、最後の「The Asp at My Chest」で壮大に消え入るように幕を下ろす様は、まるで映画のよう。

間違いなく本人たちは多少意識しているであろうマイブラ要素は、「mbv」プロデューサーによりきっちり整理され、その他のネオアコ等の成分がうまく効いている。

世間の評価は前作に比べていまいち低いようだが、私は圧倒的に心を奪われた。




2. Real Estate / Atlas



こちらのバンドもセカンドが一斉を風靡したパターンであるが、今作でもきらきら、ゆらゆらとギター・ベースが重なり、独特の空気感を生み出している唯一無二の存在。最近めっきり新しい洋楽を聞かなくなってしまったが、このバンドは追っかけ的にずっと聞き続けている。

いわゆるイージー・リスニングという言葉の通り、気負わずともあっさり聞けてしまうが、丁寧に繙けば緻密に計算されたグルーヴが散りばめられていることがよく分かる力作。本当に好きだ!




3. Fennesz / Bécs



なんの予備知識も無しに聞いても、「これはEndless Summerの続編か?!」と分かるほど(実際にそうらしいんですが)、泣けるノイズと、作り出される果敢なく美しいあの空間は、そう、アノ名盤と比肩する内容である。しばらく聞いてなかったのですが、それもあまり情報が入ってこなかったからで、ちょっと地味な存在になっちゃったかなと思っていたら、今作はあらゆる箇所からいい評判が流れ込んできた次第。

かれこれ「Endless Summer」からもう13年も経つのですね。当時フェネスはまだ30代後半、私は高校生になったばかりだったと思う。決して順風満帆な青春時代ではありませんでしたが、夏のBGMの1つとして「Endless Summer」は脳裏に焼き付いており、今作を聞いてもあの頃の騒がしい記憶がざわざわとノイズを纏ってフラッシュバックする。ドローンのようにずっと体内で鳴っていたのか。夏本番はまだちょっと先。




4. Swans / To Be Kind




5. Millie&Andrea / Drop the Vowels




6. Sharon Van Etten / Are We There




7. A Sunny Day In Glasgow / Sea When Absent




8. Owen Pallett / In Conflict




9. Death Grips / Niggas on the Moon




10. How To Dress Well / What Is This Heart?




(番外篇: 国籍不明). ECO VIRTUAL / ATMOSPHERES 第2




というワケで、すっかり流行に乗っかったランキングですが、色々なメディアを駆使して、新しい音楽にたくさん触れられた半期でした。1〜3位までは期待して待っていた作品だったのでリリース自体がうれしいものですが、内容も非常に良かったです。
Swansは復活してから評判いいですが、過去作より個人的には好きなところも多いです。パっと聞いて最近のインディーでは無かった音なので、非常に新鮮です。ところどころNYのニューウェイヴの黎明期を思わせる演奏が入ったりするので気持ちがいい。ブレないバンドです。7位、10位はまだちゃんと聞けていないんで低めにしてますが、傑作の予感がしてます。しかしジャケを並べてみると、なんだかモノクロが多いですね。



<邦楽>

1. スカート / サイダーの庭




一回聞いただけでメロディーも歌詞も覚えてしまいそうなくらいストレートなポップ・アルバムであった「ひみつ」に比べて、最初聞いたときになぜだか取っ付きにくいという印象を覚えたが、聞き込むとそんなことはなく、とても素敵なアルバムだった。ただやはりその引っかかりは、「ひみつ」に比べて複雑になった演奏やメロディー故のものだったのだろうと思う。
素敵なカッティングギターや、淡々と感情を綴るようなドラムも好きだが、何よりここでも澤部氏のボーカルが最大の魅力だ。メロディーもアダルトだし、澤部氏の歌唱力も高く、太く繊細で迫力もある。一聴してパーフェクトに思えるが、しかしながらどこか若さとは違う未成熟さ・不安定さが隠れている。スタジオ盤なのにライブ盤のように聞いてしまう箇所がいくつかあるのだ。何を書いてるか自分でも分からなくなってきたけど、これがスカートを愛してしまう理由なんだろうなーとボヤッと思っている。




2. 豊田道倫 mtvBAND / FUCKIN' GREAT VIEW




前作に続きmtv BANDでの作品。ライブがとにかく圧巻だった。「Heavenly Drive」「オレンジ・ナイト」等、名曲多数。




3. Especia / GUSTO



捻くれたポップセンスを持つ大人達が、無自覚なアイドル 達を通じてマニアックな趣味を炸裂させている、ラッセンも間違いなく聞いているであろう良質なリバイバル系ポップス。本来ならイロモノで終わってしまいそうだが、しかしながらちょうど時代は90sリバイバル中で、所謂アイドル戦国時代を通過した頃合い、多種多様なアイドルが存在し、はたまたVaporwave等というナゾのジャンルも隆盛を極める昨今でありますので、ごく自然に街に馴染むのである。舞台はシティではなくアーバン、そしてプールサイド、サイダー、夏!と書くとなんとも変な音楽なのだろうと思わせてしまいそうだが、中年も安心して聞けるド直球のJ-POP Nu Age AORアイドルソングなのでご安心を。野菜のPVは久々に感動した。





4. V.A / Light Wave '14 (Vol.1)



記事: V.A / Light Wave '14 (Vol.1)


5. Tours / Kittens e.p.




6. 箱庭の室内楽/ゆるめるモ! / 箱めるモ!




7. Ayl_E / Le Cosmicomiche

※10日間限定配信のため現在アートワーク含めデータ無し。


8. Shin Rizumu / 処方箋ep




9. aiko / 泡のような愛だった




10. 銀杏BOYZ / 光の中に立っていてね




邦楽に関しては、ポップ・ミュージックの正統が輝く結果となったと思います。10年ほど前は、恐らくは80年代のリバイバルものが跋扈していたが、そのままスライドして今日の90年代再評価に至るようです。素晴らしい。
これは世代柄なのかもしれませんが、80年代という時代そのものがサブカル臭に溢れていたため、現代のミュージシャン達がいくら引用をしても小聡明さが強く残ってしまう印象を受けてましたが、90年代は引用元が元来ポップ志向で下世話でアート感がないので、「ついにここに切り込んでくれたか!」という感動がありました。
ポップ方面の音楽がアツかったので、オルタナティブ系は控えめなランキングですが、それも時代の流れなのでしょう。4位のコンピに参加し、8位のソロ作を出しているShin Rizumuさんは今年初めて聞いたのですが、まだ相当に若いのに甘い大人のメロディを奏でていて驚きです。キリンジからの影響が強いようなのですが、4位「Light Wave '14 (Vol.1)」は渋谷系やシティ・ポップそのものではなく、その後継世代に当たるキリンジ、Cymbals、ROUND TABLE、更にはaiko等の雰囲気を強く感じました。そういえば、キリンジとaikoは「雨は毛布のように」で共演してるんですよね。そのaikoも今作は本当に快作であったなと思います。
以上、上半期、本当に傑作が多かったので、半期決算してみました。