1/24/2016

Savages / Adore Life



全身漆黒に身を包むロンドンの女性四人組バンド…と聞くと何だか戦略的な企画臭さを感じるが、そんな認識とは逆にストレートなバンシーズ嫡流のポスト・パンクを聞かせるSavages。
昨年から公開されていた新作のリード・トラック2曲がたまらないほどのスルメソングなので多大なる期待を寄せて手にした新作「Adore Life」は、デビュー作「Silence Yourself」とは別の音楽性を打ち出し、 意外にもタイトル通り大きな愛に満ちた作品だった。
一つの人生を賞賛するテーマの作品かと言われると、彼女らの歌詞はシンプルだし、特に具体的なストーリーもそこまでないのだが、そう思わせる決め手はサウンド面かと思う。
例えば上述のリード・トラック「Adore」はアルバム・タイトルと繋がる曲になると思うが、意外にもどこかPatti Smithを思わせる、激情を飲み込むような力強いバラード(と言っていいのかな?)である。歌詞を追えば泣きそうになってしまう。硬派な彼女たちのスタンスだからこそ。

彼女らの愛する黒は、闇の色であると同時に、光たる白を際立たせる色でもある。内に秘めたる普遍的なラブソングに黒を纏わせたこの新作は、聞くたび核心に迫れる気がして病みつきになるのだ。

Savages / Adore

1/20/2016

Ykiki Beat / When the World is Wide



昨年のデビュー組で一番話題が沸騰したのはYkiki Beatであったと思う。デビュー前から名前はよく聞いていたが、満を持してリリースされアルバムもアジカンのゴッチが絶賛するなど各所で好評を博し、一躍スターダムにのし上がったようだ。

彼らの売り込みの中で目立ったのは「洋楽のような」というコピー。聞けばまさにその通りで、歌詞は英語、プロモーション・ビデオも(後にリリースされたものを含め)日本人感を極力排した仕上がりとなっている。当然サウンドもストロークス以降のUSインディー・ロックとシンクロするような内容で、予備知識無しに聞けばほぼ洋楽と間違えるだろう。
で、要は「だから何だ?」という話である。洋楽が聞きたいなら洋楽を聞けばいいし、日本人が舶来風の洒落た良い音をやってくれるのは嬉しいが、それが洋楽未満の単なるコピーに過ぎないのであれば需要もないだろう。もちろん米粉で作った米粉パンみたいに、普通の小麦のパンを食えばいいのに、食料自給率が云々、グルテンが云々と申して食わぬ輩もいるわけで、邦楽の延長線上にある事を有難がる向きもあるだろうが、そんなものほんの一部に過ぎない。彼らのアイデンティティとはーー?
と、ここまで散々貶めておいてなんですが、上記はどちらかと言うとスタイルの話であり、彼らの楽曲そのものは大変恰好良い。ストロークスのファーストに熱狂していた中学生時代の私なら日本にこんなバンドが⁈と心酔しただろう。とにかく抜群に耳馴染みの良いメロディー、シンプルなリズム隊、時に太めで情熱的になるボーカルの歌いこなし、キャッチーなリフレイン、他。同じように洋楽風のロックを志向する「The fin.」や「PAELLAS」等と比べても頭一つ抜けた圧倒的な才能を感じさせる。

しかしながら、ブログ「音楽だいすきクラブ」さんで毎年集計されているブロガーによるアルバムランキングの2015年版で、彼らは意外にも81位と健闘しなかった。あくまで一指標に過ぎないが、前評判の割には、と意外に思ったのだ。こうなると所謂「ハイプ」の典型パターンに陥ってしまいそうだ。
洋楽に引けを取らない音ならヒットチャートにさえ意外と溢れている昨今、それはもはやただのスタートラインなのかもしれない。メッセージ性とか、日本語の歌詞がとか、そんなしょーもないことは全く思わないが、セカンドでは何かしらの新しさを持ったもう少し有機的な作品を期待したい。

Ykiki Beat / Modern Lies

1/15/2016

Kendrick Lamer / Untitled 2



ヒップホップの知識は殆どなく偶に話題の作品を聴く程度であるが、2015年の最高傑作との声も多い「To Pimp A Butterfly」はそんな私もどっぷりハマった。(2015年のベストに挙げなかったのは、余りに薄い知識しか持ち合わせてないが故に差し控えた為です。)
きっかけは「How Much A Dollar Cost」で、まさかのRadiohead「Pyramid Song 」がサンプリング(加工されているが)されていたことである。大した話ではないが、私の中では縁遠いと思っていた二者のリンクが衝撃的だったのだ。以来様々なブラック系のサイトを読み漁り、Lyricallyという歌詞表示アプリなんつーものをインストールしてじっくりと歌詞を繙くするなど、慣れないことをしたものだ。米国は身近なようでまだまだ遠い。
それはそうと、そのアルバムにも収録されていない曲をラマーがテレビで披露したそうだ。ラマーのライブ映像を殆ど見たことがなかった私は結構度肝を抜かれてしまった。めちゃかっこいい!
しっかり生音で演奏されているトラックと、録音されたものより情熱的なラマーのラップの一体感が素晴らしい。曲から話が逸れるが照明演出も最高。まだ歌詞はよく分かりませんが。
こんなかっこいい曲をアルバムに入れなかったなんて、ラマーは本当に今一番脂が乗っているのだな(映像見たら比喩ではなく本当に脂が乗ってたけど…)。何より次作が楽しみです。

1/07/2016

Wildhoney / Sleep Through It



2015年リリースの音楽作品に関する様々なレビューを見ていて、誰も取り上げてない(自分含め)なーと思うものがあったので、僭越ながら一つだけ挙げてみます。
バンド名はWildhoney、そうワイルドハニー。その名の通り(?)女性ボーカルのワイルドなシューゲイザー・バンドです。
巷ではシューゲイザー・ブームが依然続いているので、今更また新人かよ…という声もありそうですが、溢れかえった軽めなキラキラ音ばかりではなく、結構重めの音もかっこよく演奏するバンドです。
出身はボルチモア。ボルチモアと言えば、Future Islandsですが全然違う方向性ですね。

さて、肝心の音ですが、これまでリリースした音源の再録も含んでいるためアルバムの中でもいい意味で彼らの多様な側面を見ることができます。90年初頭のようなスカスカのギターポップ的要素もあれば、剛健な音圧とノイズ感は数多のシューゲイザー・バンドというよりも意外にSonic Youthに近い要素があったり。そして、どの曲もベタ且つラフではありますが、この手の音には肝要である美メロをしっかり備えていて、次作への期待はかなり高いと思います。
ちょっとだけ応援してます、ワイルドハニー。

Wildhoney / Owe You Norhing