12/30/2014

豊田道倫・七尾旅人・鈴木博文 「ともしび商店街のはしっこで」@渋谷TSUTAYAO-nest 2014.12.29

初めてのO-nest。TSUTAYAがやってるのは知っていた。渋谷Oグループの他のライブハウスに行ってしまったらしく(O-east?名前紛らわしい)、スタッフの可愛いお姉さんが丁寧にnestの場所を教えてくれる。
さて、ライブハウスに入るといきなりバーコーナーに昆虫キッズの冷牟田敬さんが座っている!いや、面識はないんだけど、あの目を直視してしまうとやはりドキッとする。
会場にはやたら女性が多い。なぜだ?七尾旅人効果か?あと昔からの博文ファンらしきおば様もちらほら。


始まりは豊田さんソロから。ド派手なピンクのジャージにグリーンの帽子。ソロセットでニヤつくMCを交えながら、淡々と。前に見たのはかれこれ1年前の難波ベアーズでのmtvBAND以来。思えば2014年のライブ観覧歴はMTに始まりMTに終わることになる。


続いて、七尾旅人さん。昔からのTwitter等で豊田ファンであることをちらちら見ていたが、初めて共演を見る。七尾さんが豊田さんの歌が好きというのは結構意外な感じもある。年齢はざっと10歳くらい離れてると思うけど、雑誌でちょっとずつ名前を見るようになったのは同じくらいの印象がある。98〜00年頃かな?
始まりのMCでの「東京で何してんねん」のショートバージョンの話、かなり笑えた。そこからどんどんMCが膨らむ。この人は本当にMCが好きだな、と思う。声がきれいだから、MCもやたらとサマになる。曲の一部のようにさえ聞こえる。
私が一番回数多くライブを見たミュージシャンは多分七尾旅人さんだが、肝心の演奏は見る度どんどんキレが増している。とはいえ、2年位見ていなかったのだごが、相変わらずの技巧を凝らしたエフェクターの使い方で、本当に気持ちのよい音を聞くことができた(ちょっとベクトルが苦手な宇宙方面に行ってしまっていたが…)。この独特のサウンドがやみつきになる。「ぼくらのひかり」は構成も凝ったいい曲だ。おそらくもう暫くしたら「311 Fantasia」でもリリースされるのではないだろうか、と思ったり。
この人の音楽は好きなんだけど、MCやツイートが好きではないので聞かない/見ないようにシャットアウトしている。大橋仁の炎上の話より、素晴らしい演奏を聴きたかったよ。サーカスナイトも途中で終わっちゃうし…後々のアクトの時間も押しちゃうし。豊田さんから「炎上商店街」というちょっとした皮肉が入る。


次は豊田さんの荒々しい紹介で登場した鈴木博文さん、ライブ見るのは初めてだったが、いやあカッコイイ!ムーンライダーズの「あのお方」が目の前に居る!ってことでとにかく興奮した。カッコイイのは知ってるんだけど、さすがビームスのモデルもやっちゃっただけのことはある、着こなしがいい。MCのジョークも甘すぎずアダルトな風合いで。
ライブ前半は新作「後がない。」と前作からがメイン。淡々とこなしていく。「後がない。」は七尾さん・豊田さん共に絶賛。タイトルの割に明るい前向きな内容だとのこと。確かに聞いたことなかった表題曲「後がない」や、「Tokyo Man」って曲は新作からのようだが、中期ムーンライダースをはっきりと思い出させるポップな良曲だった。その後の「凹凸」、これも名曲レパートリーにしっかり刻まれている定番ナンバー。鮫と蟹のなんとも毒々しい言い回し、頭がくらくらする。
途中で「一曲くらいは…」とボソっとつぶやきムーンライダーズの「ボクハナク」を。30歳手前の私には沁みるぜ。ここから懐かしソング連発、博文さんソロキャリアの最初期に出た「Fence」、これも改めてライブで生で聞くと歌詞のかっこよさを再認識する。
 "ぼくの車の窓にぶつかる蝶が散っていくのを
  君が指を折って数えるハイウェイ いかれた朝だ"
こんな歌詞、書けないぜ。最後は「豊田さんは暗い人かな?明るいのかな?…豊田さんに暗い歌を贈ります」とハーモニカをセットして「風におどる」で締め。「風におどる」は個人的には暗いイメージではない。「後がない。」と言っておいてそんなこともなかったり、博文さんは意外と天邪鬼?
(余談:当たり前なんだけど、お兄さんに声が似ている。いや、CDではあまり思わなかったんだけど…。)

1. 風のナイフ
2. Flyline
3. Tokyo  Man
4. 凹凸
5. riparian life
6. 一か八かで気持ちいい
7. 後がない
8. ボクハナク
9. Fence
10.風におどる


トリはNEW SEXY mtvBANDということで、宇波さんが抜けて、ベースにカメラ=万年筆の佐藤優介さん、スティールパンのトンチさんが加わって、全5名のバンドになった新生mtvBANDが登場。年齢は20代から50代までそれぞれ幅広い。トンチさん、今まで彼女の音が入った作品は数多聞いてきたが、ビジュアルを拝見するのは初めて。とても美人でびっくり。
音は言わずもがな、最高だ。前回のベアーズと同様、鈍く突き刺さる轟音。荒削りな久下さんのドラム、情緒的且つクールに弾かれる冷牟田さんのギター、大人しいのに美しい指使いの佐藤さんのベース、新たな彩りを加えるトンチさんのスティールパン。ギターとスティールパンの音がかぶってて若干カオス気味だったが、これはこれで面白い。mtvBANDがチャレンジングにどんどん進化していくのは嬉しい。これからも続けてくれるかな?まだ聞き足りないです。まだまだこれからも聞きたい。大好きです。
最後にMTがさらっと吐いた「(子供のこととかバイトのこととか恥ずかしいこと言うのやめればレジェンドになれるのに、という友達の進言に対し)馬鹿野郎。それは二流三流がやること。シンガーソングライターに恥ずかしいことなんてありません。来年はアニバーサリーですが大きいことはできません。小さいことを、正々堂々とやっていきます。」という言葉が印象的だった。それこそ豊田道倫のかっこよさの真髄である、と改めて。

1. 幻の水族館
2. ともしび商店街
3. 男はどうして
4. チョコパ
5. UFOキャッチャー
6. DJ親心
7. ゴッホの手紙、オレの手紙
8. あいつのキス
9. City Lights 2039
10. 3人
11. Heavenly Drive
(encore)
12. Vシネマ、カウンターで
13. うなぎデート


ゲスト2名含めて「大寒町」なんて期待してたけど、まあ流石にそれはなかった。
かなり押していたけど、冒頭のMCで豊田さんが「(内容に対して)値段安かったねって言って貰えるようなライブにしたい」と言っていたが、その通りで笑いあり涙あり(?)で実に充実していた。大満足。お陰で終電間に合わず、蒲田のホテルに急遽宿泊。ホテル代6,000円足しても納得でした。1年のいい締めくくりになった。最高。
(上記のセトリは自信なし!)


12/21/2014

私的2014年音楽作品番付 <洋楽・邦楽>

淡々と書いていきます。

<洋楽>

1. Real Estate / Atlas


前作「Days」は夕暮れ時には欠かせないBGMだった。今回先行して発表された「Talking Backwards」は午前の太陽が放つ眩しい光線のような美しい楽曲で、これまでになかった胸キュン要素を補完。ここまでギターの音を綺麗に重ねられるバンドは他に知らない。Weezerに関するエピソード等、同世代ならではの愛着も個人的には強い。後は、作品のポップさと裏腹にセールス的にあまり成功していない様子が頂けない&勿体ない。ほら、今度のHostess Club Weekenderも前座みたいなポジションだし...。




2. The War on Drugs / Lost In The Dream


前作である種の高みを見せ、かなり期待の高かった今回のリリースだったが、メロディーがかなりポップになって、持ち味であるタイトなドラムと緩やかなギターの相性が最大限活かされた傑作だ。もはやカート・ヴァイルがどうとか、そういう冠はまったく不要だ。
なぜか今作は中期頃のU2感があるというか…一曲目の「Under The Pressure」のせいか? いつかスタジアム級のバンドになる予感のする作品でした。端的に言うと、めちゃくちゃエモい。歌詞は私には意味がよく分からない。小難しいことは、どうでもいいのかもしれない。




3. Grouper / Ruins


一時期寝るときはずっとGrouperの「A I A」を掛けっぱなしにしてた頃があった。その他How To Dress WellやTwin Shadow等、色々掛けて楽しんでいたが、夜中にふと目覚めたとき、Grouperの奏でる音を聞くと格別に何とも言えない多幸感に包まれたものだ。
今作はまた一層コンセプチュアルな作品となっており、イントロ・アウトロでそれぞれドローントラックが添えられ、環境音のようなノイズも入っている。輪郭のないような、得体の知れない印象のGrouperであるが、この「Ruins」では少しリズの核心に迫る聞き所が多い。それにしても静岡の福嚴寺フェスに来てたなんて、大物になった今では信じられない。



4. Fennesz / Bécs


記念碑的作品「Endless Summer」から13年、その間に出された作品には少しも心を揺さぶられることはなかったのに、「Bécs」を聞いたら涙がこぼれそうになる。今作が巷の音楽好きの中で好評なのは、本質的なサウンドの魅力もさることながら、多くの人が「Endless Summer」を連想し、思い出補正を行ったことも大きいと思う。まだあの夏に終わりがないことを信じる大人たちに贈られた名作。




5. How To Dress Well / "What Is This Heart?"


よく知らなかったがインディR&Bというのが流れとしてあるらしく、気づいたらHow To Dress Wellもその位置付けになっていたが、もともとはNeon IndianやActive Childなんかと同じチルウェーヴ(死語?)一派として聞いていたので違和感がある。まあそれはそれとして、一気に突き抜けた、というか化けた。確かにR&Bとして括られるのも分かる。いや、これはR&Bですね。チルウェーヴなんかじゃない!
サウンドに傾注した印象から、一気に歌とメロディーで魅せるミュージシャンになった。もちろん「What You Wanted」等、ニクい音使いは健在。




6. Pains of Being Pure At Heart / Days of Abandon


上半期のベストを書いた際にはベタ誉めしたが、今作はアルバム内の楽曲に非常にムラがありちょい下げ。このバンドに関してはなぜだか少々贔屓してしまう…。




7. Goat / Commune


正直色物系の一発屋バンドだと認識していてあまり期待していなかったが、またしても見事なエセ・トライバル・ミュージックだ (勝手にそう呼んでる)。スウェーデンはメタルだったり、スウェディッシュ・ポップだったり、色々あって謎の国である。それでもいつか住んでみたい。サブ・ポップの今を物語る象徴的な作品。




8. Sharon Van Etten / Are We There


ビジュアルもアートワークも歌詞もタイトルもメロディーも、すべてが美しいアルバム。そもそも美人が歌うというだけで名盤力は高まるってものです。抽象的な歌詞の中に、爽やかな狂気を感じられます。それもマゾヒスティックに…。




9. Spoon / They Want My Soul


Yahoo!モバイルのコマーシャルでまさかの日本のお茶の間進出を果たしたSpoon。5年前くらいまでまったく興味がなかったのに、このオジさんバンドに今は心を奪われている。唐突な挿し音や、ダミ声、真面目さ、ストレートな「ロック」サウンドに私はワビ・サビを感じる。



10. Angel Olsen / Burn Your Fire For No Witness


Grouper、Sharon Van Etten、Julianna Barwick等、静謐な雰囲気の女性のロックばかり聴いていたからか、Angel Olsenの歌声で妙な新鮮さを感じてしまった。ばりばりオルタナって音ですね。こういうむっちりしたアメリカの女の子大好きだ。




<邦楽>

1. V.A. / Light Wave ’14 (Vol.1)


Ano(t)raksからリリースのフリーコンピ盤。No New Yorkのように見事にバランスよく複数ミュージシャンの曲がコンパイルされている。フリーダウンロード作品でここまで聞きこんだものは嘗て無いな…。
中でもShin Rizumu氏、恐ろしい才能を感じる高校生。「嘘つきな女の子」で参加。Ano(t)raksからのDL作品やフィジカル盤を聞けばわかるが、キリンジやらフリッパーズやら様々な影響を感じさせるものの、まだまだ若さを感じさせるボーカルや歌詞は変に毒されてなくて良い。冨田恵一プロデュースだったらあっさりブレイクしてしまうこともあるだろう…なんて考えてしまうが、そうなると今度は今の氏の持つ良さは大いに損なわれるのだろう。
もう1曲、辻林美穂氏の「You Know...」、90年代後半だったらありふれてそうな音だが、何度聞いても近いものが浮かんで来なくて不思議。80〜00年代のJ-POPを総括するような美しいコード進行。なんにせよフリーなので一聴して損なし。



2. シャムキャッツ / After Hours




2014年リリースであることを忘れていた、それくらい聞きすぎたし、また昔から当たり前のようにそこにあるポップソングのような堂々とした安定感もある。もっと巷に流れていてもいいはずの音楽。ブリットポップ前夜のようなドリーミーでちょっと間抜けな世界が延々と続く幸せ。




3. くるり / THE PIER




ライブでアルバム発売に先行して披露された「Liberty&Gravity」を聞いただけで次作は確実に素晴らしいアルバムになるだろうと予感できた、それくらいくるりは今脂が乗っていると思います。前作も新メンバー体制で非常に勢いのあるアルバムだったが、今回も吉田省念が抜けて三人の新体制。くるりは常に変化している。過渡期という概念がない。いつかは落ち着くものなのかと思っていたがそんなこともない。常にマエストロ岸田氏の趣味や気分を音楽に変えていくのがくるり。再びあの名コピー「すごいぞ、くるり」が浮かんだ人も多いのでは。




4. Tours / Kittens e.p.


たまたま入ったJET SETに積まれていた新着作品の群れから、何の気なしに手に取った一枚。買ったときは誰がやってるバンドなのかも知らなかったが、元YOMOYAのボーカル山本氏のバンドであった。YOMOYA時代は特別好きでもなかったのに、Toursは手放せない。音源がこれだけしかないのが辛い。もっと聞きたい!
音は録音の質感故か、なんとなくギラギラ日差しが照りつける砂漠で聞こえてくるような印象。喉が乾く。メロディーの完成度が非常に高い。フルアルバムが非常に楽しみです。




5. ゆるめるモ!× 箱庭の室内楽 / 箱めるモ!


ジャーマン・ロックからの影響を、みたいな話をよく聞くが、あまり感じないけど…。ジャケもWeezerだし…。でも曲がいいです。



6. 渚にて / 遠泳


久方ぶりの新作。ふと聞きながら思ったのは、商業ベースで成功する森は生きているやcero、シャムキャッツは、渚にてのような所謂「うたもの」バンドが居たからこそ生まれてきたということは大きいだろう。頭士奈生樹参加によりこれまでにないアンサンブルの厚みと、ずっと変わらない柴山氏と武田氏の声が私の心を揺さぶり続ける。あと、竹田氏のドラムはなんかいつまでも不思議だ。


7. 山本精一 / Falsetto


すっかりおなじみのパートナーになった千住氏とのタッグでつくられた新作。「ラプソディア」、「LIGHTS」と多作な昨今であるが、サイケ色がより強めに出ている。


8. Lamp / ゆめ


気づけばLampもベテランの域に入ってきているのか。ライブもほとんどなく、スタジオで制作に勤しんでいるようで、ちょっと仙人掛かってきた部分もある。「メロウ」という言葉で括られるうちはどうもチープな印象になってしまうが、ここまで極めれば美しいとしか言いようがない。白眉「シンフォニー」のイントロだけで私は胸がいっぱいになる。




9. 銀杏BOYZ / 光の中に立っていてね




待ちに待った新作。私の高校卒業と同時にゴイステは解散、大学進学後少ししてからリリースされた銀杏BOYZの2作は衝撃的だったし愛聴したが、年齢のせいもあってかどハマりすることはなかった。それから暫く銀杏はシングルのリリースのみに活動を留め、別名義や外仕事も増えてしまい活動休止したものかと思っていた矢先、今度は柄にもなく就職というステージに登り疲れ果ててしまった私は「17才」という南沙織の銀杏BOYZによるカバーを聞いて涙する。ほぼアカペラとノイズと絶叫で構成されるこの清楚な曲はもともと知ってはいたが、グチャグチャに噛み壊され、バックでは地獄のようなコーラス(嗚咽?)が重ねられ、どう考えても汚いはずなのだが、不思議とキラキラと輝いている。この曲が収録されているだけでも十分に価値あるアルバム。




10. スカート / サイダーの庭




前作「ひみつ」はかなりの傑作であり期待高まる中でリリースされた新作。前作に比べ突き抜けのない落ち着いた、複雑で暗めのメロディーの楽曲が多い印象だが、やはり次世代のポップを牽引できる圧倒的なセンスの良さだ。




<番外編:国籍不明>

 Vaporwaveはやはり私には衝撃的な音楽であり、流行り始めから今もそれはずっと変わらない。無論内容は90年代ポップカルチャーが前提にあり、一定世代にしか受け入れられないものだとはわかっているがこれからも永遠に聞き続けるであろう。
さて、Vaporwaveは本当に国籍がわからない。モチーフ自体は日本のものが多いが…。そして、音がどこまでオリジナルなのか、どこまでサンプリングなのかもわからない。それでも以下2作は圧倒的な個性を持っており、Vaporwaveなどという狭い世界ではなく、SAINT PEPSIのようにワイドに羽ばたいていってほしい。特にECO VIRTUALの3作品は間違いなく今年のベストだ。

bluntside / 未来 THE FUTURE





ECO VIRTUAL / ATOMOSPHERES 第1/第2/第3






<おまけ・ベストトラック10選+1>

The Horrors / So Now You Know




The Vaselines / One Lost Year



ゆるめるモ! / さよならばかちゃん




tofubeats / ディスコの神様 feat.藤井隆





豊田道倫 & mtvBAND / オレンジ・ナイト




How To Dress Well / What You Wanted





Lamp / シンフォニー






Pixies / Greens And Blues






くるり / Liberty&Gravity





平賀さち枝とホームカミングス / 白い光の朝に



Shin Rizumu / 嘘つきな女の子






<おまけ・功労賞>

https://vaporwave.me

8/09/2014

くるり / Liberty&Gravity





くるりの新曲がすごい!ってのは少し前にもナノムゲンの投稿で書いたことですが、遂にMVもリリースされた。もちろんライブと違って迫力のないYouTubeなので魅力は7掛けですが、東京事変の「OSCA」を思い出させる凝った映像に仕上がっている。
いつでも飽きれるほど冒険的なくるりについて、このハチャメチャな今作を「革命的だ」なんていう腐る程出尽くした形容で以て賞賛するのはもったいない。数多のバンドがくるりに刺激されてちょっと変わった構成・メロディーの曲を作ったりするが、それらのうすら寒さと較べてどうだろう、くるりのこの安定感。「坩堝の電圧」は諸事情によりある意味封印された作品であるが、そこで得られた「ごった煮」ロックの突き抜け方が、それ以降の作品に大きく影響し、結果この名曲が生まれているように感じる。
今作の一番の魅力は、変なプログレのようにカオティックな構成の中のそれぞれの節で、絶妙にポップさを捩じ込んでくる岸田繁のメロディー・メイカーっぷりだ。テンポの落ちるCメロのようなパートで、気持ちは高揚し泣きそうになってしまう。先行してリリースされている「Remember me」も収録されたニュー・アルバムを楽しみに待つ。

8/02/2014

The Acid / Liminal


先頃まで梅雨がじめじめと続いていたので、営業車の窓を開けっ放して高速道路を疾走したいところを堪え、湿気が籠もりクーラー音が駆け巡る車内に適切な音楽はないかと探していたところ、The Acidという非常にストレートな名前のユニットに出会った。ジャケットを見ると何となくJames Blakeのファーストに似ていて、ぼやけた音像を可視化したようなあの感じ・・・ああダブステかと察して頂けるかと思う。タイトルを読むと砂原良徳の名作と同じ・・・ああエレクトロニカかと察して頂けるかと思う。

で、まったくその通りで、ミニマル・エレクトロニカ〜チルウェイヴ〜ポスト・ダブステップ辺りを真っ当に消化した、音数の少ないシンプルで気持ちのよい音。でもここまでなら巷に溢れている。The Acidの魅力は声だ。
(そういえば自分で使っていながら言うのも何ですが、「ポスト〜」という表現はホント嘘くさい、というか、愛を感じない。テキトーな感じがしてしまいますね。)

このユニットのボーカルを務めるのはオーストラリアで活動するSSW、Ry X氏。Bon Iverのような消え入りそうな儚い美声の持ち主であり、相当な技巧を感じさせるが、今作ではその有り余る力量を恐ろしく控えめに抑えて収録されているように感じる。それゆえにミニマルなトラックに乗っかるこの濃厚に凝縮された声が中毒性を持ち、梅雨で滅入った気分を刺激する。

個人的に一番好きな「Creeper」、これを聞いて頂ければハマって頂けるかと思う。現代の「Warm Leatherette」になり得る名曲だ。

Ry X以外のメンバーもAbleton Liveの開発メンバーや著名プロデューサーが関わっており(私は存じ上げなかったが)、才人の集まりだそう。この夏、ブレイク必死?

7/23/2014

一発屋を聞く【洋楽篇】Vol.1: Semisonic、The Montrose Avenue、New Radicals

ここでの一発屋というのは、決してそのアーティストを貶めるものではなく、寧ろ一発飛び出した事への敬意と、時代の徒花として散っていった事への同情を込めて、誠意を持って書きたいと思います。
今回は20世紀の最後に一花咲かせた美メロ系バンド3組を取り上げます。


Semisonic / Closing Time



この頃のゲフィンは、グランジの影響下にあるアメリカン・ロックを量産しており、そのどれもメロディーはなかなか秀逸である。なかでもSemisonicはずば抜けて泣きのメロディーにこだわっており、中学生の私のハートもガッツリ掴まれた。このしゃがれ声に弱いんだよなぁ。アルバム「Feeling Strangely Fine」もお小遣いで買いました。
今聞けば単純なメロディーで、深みもそんなにないが、これはこれで。「洋楽って、かっこいい!」って思わされたのをちゃんと覚えてます。この頃のアメリカン・ロックに影響を受けているミュージシャンも多いのではないかな、と思う(ダサいから公言はされないだろうけど。)てかそもそもアメリカンロックってなんなんだ。
一応彼らのことを調べると、多少遅咲きであり、嘗ては意外にもサイケロックバンドをやっていたそうな。「Closing Time」はグラミー賞を受賞しているが、サイケロックでは無理だったろうなぁ。


The Montrose Avenue / Where Do I Stand



このバンドは本当にもっと評価されてもいいと思う。今からでも遅くない。
そもそもビジュアル良し、歌良し、日本人好みの歌曲風の泣きメロ&ハーモニー、・・・売れ要素しかないのになんで消えてしまったのか。
ロンドン出身の5人組、The Montrose Avenueはデビューアルバム「Thirty Days Out」1枚と数枚のシングルのみを残して解散しているが、当時はフジロックに出演する等、日本でもかなり人気があり、シングルの日本盤なんてものも出ていたと記憶している。この時期のイギリスの音楽市場は、所謂ブリット・ポップが低迷し、なんだかよく分からない過渡期みたいな状態にあったようだ。素敵なバンドも多数いたと思うが(挙げたらキリがない)、この混沌の中で非情に淘汰されていったのだろう。そういう意味では「持っていない」バンドだったのだろう。


New Radicals / You Get What You Give



1997年頃であろうか。私がまだ音楽情報のソースをFMラジオに一存していた頃、名古屋のZIP-FMでよくかかっていたと思う。まさにザ・洋楽というイメージで、「洋楽」と言われればこの曲が浮かんでくるくらい。まだ英語もよく分からず、興味こそなかったが、メロディーの美しさにどこか惹かれていたのかもしれない。この数年後、サンタナとミシェル・ブランチによる名曲「Game of Love」がZIP-FMでもヘビロテ、私の中でも大ヒットするのであるが、この高揚感のある2曲の作曲者が同一人物だと知ったとき、恐ろしく合点が行ったものである。というか、「Game of Love」は本当にいいな、改めて聞くと。New Radicalsよりこっちの方が良かった。サンタナの夕焼けを描くようなギターも最高だ。このギターソロは心に残る。そして、ミシェル・ブランチ、どこへ行った。



7/17/2014

Tours / Kittens EP

TOURSを知ったのは下北沢のJET SETにスカートの新譜を買いにいったときだ。
スカート「サイダーの庭」は予想外に値段が安く、ワンコイン余ったのでもう1個なんか買っとくかと田舎者の私は考え、果てに目の前にあったこの感じのよいジャケットの作品を手に取った。そんな私はジャケ買い信者である。
試聴もしなかったのでまったく音の想像はつかないが、まあJET SETで売ってるなら間違いなかろうということで帰宅してプレイヤーにかけてみる。するとどうだ、下手したらスカートより素敵じゃないか、ってくらい良い音が流れてきた。

調べてみるとボーカルは2011年に解散したYOMOYAの山本氏、ドラムは話題のシャムキャッツの藤村さんということで、なんとまあ手に取るべくして手に取ったようなCD-Rであった。



音は非常にまろやかで、進行形のUSインディー系と共鳴するような音だと思う。
こういう音は流行だと思うが、どう表現したらいいのか分からない。紹介記事等を見ていると、フォーキー、オルタナティブ、シティー等のキーワードが頻出するが、そんな感じで間違いない。例えて言うなら、山本さんの、さらりとしつつもアクの強いボーカルと歌詞、分かりやすいメロディーの組み合わせはAlfred Beach Sandalなんぞを彷彿させたりする。はたまた、ちょっと不協和音的なコーラスや捻くれたギターリフなんかを聞くと、昔いたSoFkayなんてバンドを思い出したりも。まあそれは余談で。
巷に溢れるシティポップ系、オーガニック系のロックと同じ括りに入れられていても違和感は無いくらいにとても耳なじみが良いが、前述の通りのコーラスや、絶妙なブレイク、強靭なドラムソロ&ギターソロ等、サウンドは本当にクセがある。超絶にトガっている。聞いていて飽きない。それから、所々字余りになりそうな分量のリリックを綺麗に歌いこなすのが、とても面白い。

本作は4曲入りのEPであるが、どれも異なる志向でありながら、美しくまとまった鮮やかな作品である。

1. Kittens
タイトル曲。YOMOYA結成からカウントすればもう10年近い経歴になる山本氏のセンスが結集されている、と思う。



2. ドレスコード
一番好きな曲。「君とワルツを踊る格好になる」という詞のお洒落さったらない。アウトロの歪んだギターまでじっくり快感を味わえる。

3. 王の船
王舟?一番スローな曲。展開部の地味な盛り上がり方は、とても奥ゆかしく、ピアノ(?)系のノイズが重なるところは本当にグッとくる。



4.  赤い車
タイトルのせいじゃないが、スピッツが歌ってても違和感のないような元気な曲。
なんだからところどころナンバーガールの影を感じる。この曲に限らず。全然音の表面には出ていないけど。

と、ここまで書いて思ったのが、騒がしい白昼夢のようなアルバムと書くとしっくり来る。決して夜向けの音楽(ナイト・ミュージックとでもいうのか?)ではないし、シティ系でもアーバン系でもなく、真っ昼間から河原でドンチャンとBBQをするような、小洒落ないジャンキーさが魅力だ。そしてそれこそ、超究極のお洒落であり、美しい。

7/13/2014

NANO-MUGEN FES. 2014

・KANA-BOON
若手で一番勢いがある、というコピーもよく耳にするバンド。昨年度の「CDショップ大賞」に2作もエントリーしていて、プッシュされているのは間違いない。私も1stアルバムは借りました。TSUTAYAで。本公演のフロント・アクトではあるものの、会場の熱気はマックス、アリーナも満員で、とにかく勢いがあった。「僕らを見に来ているお客さんもたくさんいると思うけど、素敵なバンドがたくさん出るので最後まで楽しんでって下さい」という主催者的な発言に度肝を抜かれた。ボーカルのビジュアルも、MCも溌剌としていてブレイク必至でしょう。

・It's A Musical
いい!事前にネットで聞いて予習はしていたものの、結構インパクトあった。キーボード&ボーカルの女の子とドラムスの兄ちゃんの、欧州の2人組。トイ・ポップと言われそうなチープでシンプルな構成で可愛らしい音を鳴らす。片方がスウェーデン出身(どちらの人かは分からない)とのことで、スウェディッシュ・ポップ色を持ちながらも、不思議と由緒正しいフレンチ・ポップの匂いがする。そんな売れてるわけではないと思うんだけど、プロモーション次第では大化けする気がする。好き。


・Tegan And Sara
カナダの双子がギター、ダブルボーカルを努める2人組ユニット。カナダのFLIP-FLAP、てなところか? カナダ発で有名なミュージシャンって、Arcade Fireみたいなちょっとウィットのきいたロックか、あるいはとことん大衆的なポップスに大別される気がして面白い。こちらは後者で、ボスボス腹に突き刺さるシンプルなドラムが特徴的なシンセポップ。ボーカル抜きで(なんて言ったら失礼だが)も、充分に楽しめる演奏だった。

・グッドモーニングアメリカ
KANA-BOONと同時デビューと聞いていたから若手かと思っていたら、もう三十路越えしてて、下積み長いんだなーと思ってしみじみとした気持ちで見てしまった。NICO Touches the Wallsと同じようなメロディーが印象に残るポジティブなポップロック。2000年代前半はナンバーガールとスーパーカーの影響下にあるバンドが多かったが、いつからでありましょう—おそらくアジカン・ストレイテナー・ART-SCHOOLの御三家辺りからオルタナ色が消え、きれいで伝わりやすいメロディーの日本語のロックが、「売れる」ロックバンドの絶対条件となったのだろうな。となると、ここにこのバンドが招かれているのは必然か。ベーシスト「たなしん」さんの面白パフォーマンス、声の良いギタリスト、真摯なボーカル。バランス良い。

・Ropes
後にストレイテナーに移籍する日向氏、大山氏を嘗て擁していたART-SCHOOLの戸高氏と、on button down、KARENのアチコさんによるユニット。ギター1本とボーカルだけなのにこの重厚な感じは、流石アチコさん。生脚も美しかった。

・ストレイテナー
主催者アジカンの盟友、ストレイテナー。出演は毎年恒例らしい。ヒットナンバーを凝縮した素敵なセットリストの中で、デビュー曲「TRAVELING GARGOYLE」を初めてナマで聞けたのでもう大変満足。やはり演奏が巧い、特に日向氏。こうしてフェスで聞くと一層感じる。この切れ味は流石。後で知る事になるのだが、シークレットゲストでSOIL&"PIMP" SESSIONSが出るならば、「From Noon Till Dawn」はタブゾンビの飛び入り付きで見たかったな、と思った。あと、NANO-MUGENコンピ盤に入ってる「翌る日のピエロ」は演奏せず。聞きたかったのに…。

・Owl City

・Hi, how are you?
初見。odd eyesにも所属していた男の子と、素朴な女の子の2人組。ちょっと遅れて始まったのは、MCにあった「日産スタジアムと横浜アリーナを間違えた」からか? ギター&ボーカルの原田さん、巨漢だし、おれの昔の友達に似てるし、何だかただ者じゃない!のは間違いない。オザケンをちょっとマッチョにしたような歌い方が素敵。

・くるり
とにかく良かった。くるり最高。
くるりはバンドアンサンブルという点において、今絶頂期なのだろう。
くるりもフェス出演が多いので、最近は年に2、3回程見ているのだが、これまでと圧倒的に違う熱を感じた。
恒例の開演前リハでの「ワンダーフォーゲル」から始まり、一曲目「Morning Paper」の美しいアウトロ。この演奏を聞いて、「Philharmonic or die」というタイトルがふっと浮かんでくる。頻繁にライブを見てると、岸田さんの志向が常々変化しているのがよく分かるが、最近はまたこの手の爆音サイケがご流行の様子。
この美しい演奏を提供するのは、ファンファン含む基本メンバーに加え、Boon Boon Satellites等で活躍し、本公演でも硬派なドラミングを聞かせてくれた福田洋子さん、吉田省念さんの抜けた直後から完璧なサポートに入った山本幹宗さん(元The Cigavettes)。ドラムはあらきゆうこさんや元54-71のBOBOさんだったりする事も多く、メンバーはかなり流動的なバンドだが、岸田さんの圧倒的なイニシアチブで奇跡的にバンドの勢いは保たれている。特に「坩堝」まではなかったファンファンの大味なトランペットが、その勢いを下支えしているのは間違いない。最強の布陣だ。
岸田さんの眼鏡がずり落ちるほど白熱したプレーに次いで、「ワールズエンド・スーパーノヴァ」でちょっとさっぱりしたあと、新曲2曲をぶっ続けで披露。その場でタイトルはよく分からなかったが、ネットで調べると「loveless」と「Liberty & Gravity」。「loveless」、今のくるりにぴったりのタイトル。恒例のチオビタのCMソングだ。そしてMCで先に"なんか変な曲やります"と言い訳した「Liberty & Gravity」、これがとにかく素晴らしい。私の耳がよければもっと鮮明にストーリーが聞き取れたのだろうが、何やら博士が登場するような話が綴られた曲。東洋的な色を添えた轟音の真っ只中、LibertyとGravityという単語が登場するサビのようなところで感極まって思わず涙が出そうになってしまった。(その場では歌詞を覚えていたが、一日経ったら忘れてしまった。年ですね。)くるりも所謂"変な曲"は多いが、ここまで複雑な構成で、色々と曲調が変化するのはまだ聞いた事が無かった。シングルカットされるのかどうか分からないが、これが収録されるであろう新作アルバムが楽しみである。
この語、岸田さんの気遣いで著名なシングル曲「ばらの花」「虹」「東京」で結ばれる。アレンジはちょっとずつされているものの、最近のくるり曲と同じノリで聞けるのはちょっと不思議だ。これだけ多様な種類の曲を出しておきながら、やはり岸田さんには「さよならストレンジャー」から通じて何か一貫したものがある。
「虹」「東京」が最後というのは、別に意識はしてないかもしれないが、先日亡くなった佐久間正英さんとくるりのタッグで生まれた名曲だ。そんな事を考えながら、轟音に包まれて美しく楽しく聞き終えた。ぶっきらぼうなMC。颯爽と帰っていくメンバー。ロックバンドとして鮮やかだった。
「坩堝の電圧」は間違いなく完成度の高い名盤で、くるりの中でも大きなターニングポイントとなる作品であるが、リリース後しばらくしてからその作品からの楽曲は、知る限りライブでは演奏されていない(と思う)。これには岸田さんの色々な思いがあるのだろう。今回のライブを見て、今度のアルバムは「坩堝〜」すら過渡期的な作品だったと思わせてくれるくらいに、スゴイものになると期待している。
尚、今回珍しくアジカン、くるりの共演になったわけですが、私にもアジカンはくるりのパクリバンドだなんて思ってた時期がありました。この二者の関係ってこれまであまり取り沙汰されなかった気がするが、今回の共演そのものや、岸田さんの後藤さんのメガネに関するMCや、ゴッチブログに書かれたくるりへの思い等、興味深いところを知ることができて面白かった。

・The Young Punx
ジュリアナ東京みたいで面白かった。イギリスのm-floみたいな感じか?

・The Rentals
前半の音響が悪すぎて辛かった。ここまですごく音がよくて感動してたのに、勿体無い。後半は何とか持ち直し、1stからの名曲オンパレード。「Friends of P」に私の心が燃え上がる。実は先日のアジカンの周年ライブにもたまたま行っていた私、そこでもマット・シャープを見ている。一年に二回もマットのライブを見ることなど、アジカンファン以外にはできまい。
Ashのティム・ウィーラーがギターを担当していたのもビックリ。サプライズでAsh「Girl From Mars」も聞けた。世代的にはツボだが、20代前半の子はAshの栄光の時期を知らないかも。まったく名前を聞かなくなってしまったAshだが、カムバックを期待したい。てなわけで無駄に音が粗かったのが勿体無いが、いいものを聞けた。

・ASIAN KUNG-FU GENERATION
アジカン。通好みの曲を織り交ぜつつ、「リライト」「君という花」等の名曲もジャンジャンやる。アンコールではマット・シャープ、ティム・ウィーラーも登場しWeezerカバーも。
後藤さんのMCは癖あるし敵を作りやすいだろうけど、本当に純粋な人なんだろうなと思う。主張を通す為に敢えて嫌われ役を買って出てる、と評した記事を何かで見たが、Twitterでも噛み付きやすいところを見ると、そんな次元でもない気がする。


というわけで、初めて来たナノムゲンでしたが、涼しいし、混みすぎてないし、座席はしっかりあるし、駅近だし、メシはうまいし、非常に環境が整っていて素晴らしいフェスでした。

とにかく、くるりがよかった!
くるり!
くるりのリスナーとしてはTEAM ROCK〜アンテナの頃がピークで、最近あまり深く聞いてなかった。
しばらくくるりをもう一度デビュー時期から聞き直す生活になりそう。
すごいぞ、くるり。

7/06/2014

私的2014年上半期音楽作品番付 <洋楽・邦楽>

こんなの自己顕示以外の何モノでもないですが、よいものがたくさんありましたので。


<洋楽>

1. Pains of Being Pure at Heart / Days of Abandon




セカンドと比べて明るめの楽曲が多いものの、ジャケット画のようにどこか退廃的な印象を受ける。ボーナストラックが良いらしいが、私はアナログで買ったため未聴。しかし、アコギが美しい「Art Smock」でゆっくりと始まり、最後の「The Asp at My Chest」で壮大に消え入るように幕を下ろす様は、まるで映画のよう。

間違いなく本人たちは多少意識しているであろうマイブラ要素は、「mbv」プロデューサーによりきっちり整理され、その他のネオアコ等の成分がうまく効いている。

世間の評価は前作に比べていまいち低いようだが、私は圧倒的に心を奪われた。




2. Real Estate / Atlas



こちらのバンドもセカンドが一斉を風靡したパターンであるが、今作でもきらきら、ゆらゆらとギター・ベースが重なり、独特の空気感を生み出している唯一無二の存在。最近めっきり新しい洋楽を聞かなくなってしまったが、このバンドは追っかけ的にずっと聞き続けている。

いわゆるイージー・リスニングという言葉の通り、気負わずともあっさり聞けてしまうが、丁寧に繙けば緻密に計算されたグルーヴが散りばめられていることがよく分かる力作。本当に好きだ!




3. Fennesz / Bécs



なんの予備知識も無しに聞いても、「これはEndless Summerの続編か?!」と分かるほど(実際にそうらしいんですが)、泣けるノイズと、作り出される果敢なく美しいあの空間は、そう、アノ名盤と比肩する内容である。しばらく聞いてなかったのですが、それもあまり情報が入ってこなかったからで、ちょっと地味な存在になっちゃったかなと思っていたら、今作はあらゆる箇所からいい評判が流れ込んできた次第。

かれこれ「Endless Summer」からもう13年も経つのですね。当時フェネスはまだ30代後半、私は高校生になったばかりだったと思う。決して順風満帆な青春時代ではありませんでしたが、夏のBGMの1つとして「Endless Summer」は脳裏に焼き付いており、今作を聞いてもあの頃の騒がしい記憶がざわざわとノイズを纏ってフラッシュバックする。ドローンのようにずっと体内で鳴っていたのか。夏本番はまだちょっと先。




4. Swans / To Be Kind




5. Millie&Andrea / Drop the Vowels




6. Sharon Van Etten / Are We There




7. A Sunny Day In Glasgow / Sea When Absent




8. Owen Pallett / In Conflict




9. Death Grips / Niggas on the Moon




10. How To Dress Well / What Is This Heart?




(番外篇: 国籍不明). ECO VIRTUAL / ATMOSPHERES 第2




というワケで、すっかり流行に乗っかったランキングですが、色々なメディアを駆使して、新しい音楽にたくさん触れられた半期でした。1〜3位までは期待して待っていた作品だったのでリリース自体がうれしいものですが、内容も非常に良かったです。
Swansは復活してから評判いいですが、過去作より個人的には好きなところも多いです。パっと聞いて最近のインディーでは無かった音なので、非常に新鮮です。ところどころNYのニューウェイヴの黎明期を思わせる演奏が入ったりするので気持ちがいい。ブレないバンドです。7位、10位はまだちゃんと聞けていないんで低めにしてますが、傑作の予感がしてます。しかしジャケを並べてみると、なんだかモノクロが多いですね。



<邦楽>

1. スカート / サイダーの庭




一回聞いただけでメロディーも歌詞も覚えてしまいそうなくらいストレートなポップ・アルバムであった「ひみつ」に比べて、最初聞いたときになぜだか取っ付きにくいという印象を覚えたが、聞き込むとそんなことはなく、とても素敵なアルバムだった。ただやはりその引っかかりは、「ひみつ」に比べて複雑になった演奏やメロディー故のものだったのだろうと思う。
素敵なカッティングギターや、淡々と感情を綴るようなドラムも好きだが、何よりここでも澤部氏のボーカルが最大の魅力だ。メロディーもアダルトだし、澤部氏の歌唱力も高く、太く繊細で迫力もある。一聴してパーフェクトに思えるが、しかしながらどこか若さとは違う未成熟さ・不安定さが隠れている。スタジオ盤なのにライブ盤のように聞いてしまう箇所がいくつかあるのだ。何を書いてるか自分でも分からなくなってきたけど、これがスカートを愛してしまう理由なんだろうなーとボヤッと思っている。




2. 豊田道倫 mtvBAND / FUCKIN' GREAT VIEW




前作に続きmtv BANDでの作品。ライブがとにかく圧巻だった。「Heavenly Drive」「オレンジ・ナイト」等、名曲多数。




3. Especia / GUSTO



捻くれたポップセンスを持つ大人達が、無自覚なアイドル 達を通じてマニアックな趣味を炸裂させている、ラッセンも間違いなく聞いているであろう良質なリバイバル系ポップス。本来ならイロモノで終わってしまいそうだが、しかしながらちょうど時代は90sリバイバル中で、所謂アイドル戦国時代を通過した頃合い、多種多様なアイドルが存在し、はたまたVaporwave等というナゾのジャンルも隆盛を極める昨今でありますので、ごく自然に街に馴染むのである。舞台はシティではなくアーバン、そしてプールサイド、サイダー、夏!と書くとなんとも変な音楽なのだろうと思わせてしまいそうだが、中年も安心して聞けるド直球のJ-POP Nu Age AORアイドルソングなのでご安心を。野菜のPVは久々に感動した。





4. V.A / Light Wave '14 (Vol.1)



記事: V.A / Light Wave '14 (Vol.1)


5. Tours / Kittens e.p.




6. 箱庭の室内楽/ゆるめるモ! / 箱めるモ!




7. Ayl_E / Le Cosmicomiche

※10日間限定配信のため現在アートワーク含めデータ無し。


8. Shin Rizumu / 処方箋ep




9. aiko / 泡のような愛だった




10. 銀杏BOYZ / 光の中に立っていてね




邦楽に関しては、ポップ・ミュージックの正統が輝く結果となったと思います。10年ほど前は、恐らくは80年代のリバイバルものが跋扈していたが、そのままスライドして今日の90年代再評価に至るようです。素晴らしい。
これは世代柄なのかもしれませんが、80年代という時代そのものがサブカル臭に溢れていたため、現代のミュージシャン達がいくら引用をしても小聡明さが強く残ってしまう印象を受けてましたが、90年代は引用元が元来ポップ志向で下世話でアート感がないので、「ついにここに切り込んでくれたか!」という感動がありました。
ポップ方面の音楽がアツかったので、オルタナティブ系は控えめなランキングですが、それも時代の流れなのでしょう。4位のコンピに参加し、8位のソロ作を出しているShin Rizumuさんは今年初めて聞いたのですが、まだ相当に若いのに甘い大人のメロディを奏でていて驚きです。キリンジからの影響が強いようなのですが、4位「Light Wave '14 (Vol.1)」は渋谷系やシティ・ポップそのものではなく、その後継世代に当たるキリンジ、Cymbals、ROUND TABLE、更にはaiko等の雰囲気を強く感じました。そういえば、キリンジとaikoは「雨は毛布のように」で共演してるんですよね。そのaikoも今作は本当に快作であったなと思います。
以上、上半期、本当に傑作が多かったので、半期決算してみました。