3/15/2016

ANOHNI / Drone Bomb Me

ANOHNIの「4 Degrees」はフィードで入ってくる新着トラックの1つとしてしか聞いていなかったが、どこか聞き覚えのある声と濃いメロディー、そして不安な気持ちになるアートワーク故に脳裏に焼きついたままであった。それがAntony & The JohnsonsのAntony Hegartyによる楽曲だと気づいたのはセカンド・トラックである「Drone Bomb Me」を聞いてからである。
Antony & The Johnsonsとは異なりバキバキにトラックを聞かせる作り自体そもそも完全に別プロジェクトなのだろうけど、別に時代に迎合した訳でもなく、これまでのAntonyの延長線上にあると強く感じる。そうはいいながらも、2000年以降のポスト〜と冠の付く音の仕分け方を再総括するような、ポップ・ミュージックとしての先進性もあっさり醸し出しているところは流石であり、アントニーの才能とプロデューサー陣のセンスの賜物だろう。(※「4 Degrees」のプロデュースはOPNとHudson Mohawke。私の大好物です。)
しかしどれだけ音楽性が変わろうとも、この唯一無二の声だけはブレずにアントニーそのものであり、聴くたびに傷つくような癒されるようなアンビバレントな感覚に襲われる。とても美しい歌声なんだけど、聞きようによっては叫びや嗚咽のようにも聞こえる。これまでのMVやアートワークを見ても、頭の中で美醜の価値観が逆転するようなエグさがある。ナオミ・キャンベルを起用(!)した今回のMVだって相変わらず人間の体の美しい造形を以って不気味な演出を見事に作り上げている。
佳曲が2つ発表され、まだ見ぬアルバム「Helplessness」への期待が益々高まる。

ANOHNI / Drone Bomb Me


ANOHNI / 4 Degrees