3/31/2018

Kyle Craft / Full Circle Nightmare



音楽をよく聴く人は、それぞれ自分の中で「アタリ」のジャケットみたいなものがあるのではないかと思う。Kyle Craftの新作は、こちらを強く見つめるKyleが中心に据えられ、中世の西洋画のような構図・トーンの、しかし飾り気のあまりないシンプルなジャケットであり、一目見てビビッときた。

David Bowieに最大の賛辞を送る彼のグラム・マナーの前作からすると、声色も心なしかワイルドになり、音もかなり泥臭くなっている。ルーツであるグラム・ロックも感じさせながら、彼の育った田舎を匂わせるフォーク、カントリー、アメリカン・ロックの風味も強く感じさせる、そしてそのどれにも偏らず絶妙な均衡が保たれた、なんとも奇妙な音だ。こういうのをミッシング・リンクというのだろうか…。前作から2年弱でありながら、大きく変化を感じさせる新作となった。The DecemberistsのChris Funkがプロデュースという想定外なプロセスも大きく影響しているのだろう。

悲しいことに世のレビューではあまり良い評価はされていない。この手の音が好きそうなロッキング・オンでさえほぼスルー状態。日本人が好きそうな音なのにあまりレビューも見かけない。なので書いてみました。

3単語で作る所謂「ロック」感の強いタイトルが多く(「Fever Dream Girl」や「Gold Calf Moan」等、「Blankey Jet City」みたいな感じ(笑)、10曲中7曲)、でも歌っているのは切ない恋の物語だったり、そんなロックンロール・スター然とした存在感もたまらない。
グっときた歌詞はこれ。
Send your regards when your heart is ripe for the stealing.
腑抜けのような辛抱強いような、純粋なような勝手なような、男ってこんな感じだ。男らしいアルバムだ。